FTTH化工事で誰が得をしたか?
■動画解説(内部留保金12億円以上→631百万円に訂正)
■説明資料(内部留保金12億円以上→631百万円に訂正済み)
御前崎市のケーブルテレビ(CATV)事業について
御前崎市は、テレビ放送の難視聴対策として、国の補助金などを活用してCATV(ケーブルテレビ)施設を整備し、テレビ放送を再送信する事業を行ってきました。
CATV施設では、有料のテレビ再送信サービスに加えて、無料の行政サービスも提供しています。具体的には、市議会中継などを行う「市民チャンネル」、緊急連絡を音声で伝える「音声告知放送」、加入者同士のみ通話できる「FAX電話システム」です。テレビ放送を視聴するには、加入者が御前崎市に対して月額2,600円程度の利用料を支払う仕組みになっていました。
CATV施設の維持管理は、御前崎市が株式会社御前崎ケーブルテレビ(御前崎市とシーテックがそれぞれ29%を出資し、残りを農協や商工会などが出資)を指定管理者に指定して委託していました。指定管理者は施設の維持管理を行うと同時に、その施設を使ってインターネット接続事業を自主事業として行い、独自に収入を得ていました。
平成19年、御前崎市はCATV条例を改正し、それまで市の収入だったテレビ放送加入料収入を、指定管理者である御前崎ケーブルテレビの収入に変更しました。
なぜFTTH化が必要とされたのか
通常のテレビ放送は電波を直接アンテナで受信しますが、高い建物などの障害物があると受信しにくくなることがあります。ケーブルテレビは放送局から加入者宅まで有線でつなぐため、こうした障害物の影響を受けにくいという特徴があります。
御前崎市のCATV施設は建設から15年ほどが経過し、設備の老朽化や交換部品の調達難といった課題を抱えるようになっていました。これを背景に、伝送路を光ファイバーで結ぶ「FTTH化(光化)」の必要性が話題に上るようになります。
平成28年6月の御前崎ケーブルテレビ株主総会資料では、CATV加入者数の減少が課題として挙げられ、その要因の一つとしてNTTなど通信事業者による光インターネット・光電話とのセット販売が指摘されています。翌平成29年6月の株主総会では、2020年の東京オリンピックまでに4K・8K放送に対応できるよう、伝送路のFTTH化に向けた詳細設計を実施する方針が示されました。
この経緯は、本来は御前崎市が主体的に判断すべきCATV事業の運営方針が、指定管理者である御前崎ケーブルテレビ側の主導で先に固まっていったことを示していると言えます。当時の御前崎ケーブルテレビの社長は栁澤氏(御前崎前市長)であり、株主総会でのこうした方針決定に関与していました。
FTTH化工事の内容
御前崎市は、市が直接工事を発注すれば総額約23.5億円かかるが、御前崎ケーブルテレビに発注させれば約14.7億円で済むと議会に説明し、承認を得ました。
これに基づき、市は平成30年4月1日付けで「伝送路(FTTH化)改修工事負担金契約」を締結しました。契約内容は、市が施設維持費を含めて11年間で総額14.8億円を御前崎ケーブルテレビへ支払い、完成したCATV設備の所有権は御前崎ケーブルテレビに帰属する、というものでした。
なお、令和7年8月の市議会予算決算審査特別委員会で市が報告した内容によると、平成31年4月の契約締結から令和6年度末までの6年間で約8億2,500万円が既に支出されています。その後、伝送路工事の手直しが完了したことに伴い契約額が約9,700万円減額され、契約総額は約13億8,220万円に改定されました(本年4月1日付、残り5年間で約5億5,600万円を支払う予定)。
令和7年8月、市議会で何が明らかになったか 委員会議事録
令和7年8月19日、御前崎市議会の予算決算審査特別委員会が開かれ、このFTTH化工事の経緯について集中的な審議が行われました。ここで、これまで市民に十分説明されてこなかった重要な事実が次々と明らかになりました。
市長自身が、社長との兼務を認めている
下村市長は「私は、御前崎ケーブルテレビの代表取締役も兼ねております」「私は今市長の立場でもありまして、市長と社長を兼務している状況」と述べています。市がケーブルテレビに多額の公金を出す側と、それを受け取る会社の代表が同一人物であるという構図を、市長自身が公式の場で認めた形です。
「負担金を払ったのに、市には何の権利も生じていない」(委員会委員長)
予算決算審査特別委員会の阿南委員長は、次のように厳しく指摘しました。「議会が出した負担金がそのまま向こうに、ただでやるような契約を結んだということは一言も知らない」「負担金というのは、負担すれば当然その権利が生じる。その権利が、何も生じてない。ここに大きな問題がある」。市が公金を「負担金」として支出したにもかかわらず、その見返りとなる施設所有権などが市に生じない契約になっていたことを、議会側が問題視した発言です。
FTTH設備は、市の固定資産台帳に記載されていない
村田委員の質疑により、FTTH化に投じられた設備が市の固定資産台帳に一切記載されていないことが判明しました。阿南委員長は「市は負担金を出してケーブルテレビが発注して工事をやったのだから、民法上はケーブルテレビに所有権が生じている」と説明しています。市民の税金(負担金)を投じて作られた設備でありながら、市の資産としては記録されず、所有権は最初から御前崎ケーブルテレビに帰属する仕組みになっていたことになります。
出資比率が50%未満のため、議会のチェックが及んでいなかった
阿南委員長は「公設民営の会社が、近年過剰な営業利益を計上し、年間売上が6億円前後の会社でありながら内部留保金を12億円以上も保持していることに対し、何ら市のチェックが入らなかったこと自体が異常」「市の出資比率が50%に満たないということで、市議会への報告もなかったことが今日の状況を生んだ」と述べました。市が29.09%しか出資していないために、本来必要なはずの議会報告や監視の仕組みが働いていなかったという構造的な問題を指摘したものです。*令和6年3月決算内部留保金=利益剰余金631百万円
市民の税金が、負担金を経由して国税として流出している
阿南委員長は、市が負担金として支出した税金が御前崎ケーブルテレビの利益となり、そこから多額の法人税が国に納められている点についても、「年間わずか売上6億円の会社が、年間7,000万円も8,000万円も国に税金を納めて、なおかつ、利益剰余金が過去2年間で年間2億円ずつ貯まっていくなんていうものは、常識以前の問題」「今後5年間で2億円もの市民の税金が国税として払われるなんて信じられない」と批判しました。市民から集めた税金が負担金という形で会社に渡り、その一部がそのまま国税として市外に流出している構造が、議会の場で問題提起された形です。
市長・担当課長による正式な謝罪
下村市長は「当時の議会に対しての説明不足という点は……確かにそういう傾向があるというふうに認識いたしました。……お詫び申し上げたい。誠に申し訳ございませんでした」と述べ、池田デジタル推進課長も「伝送路設備の所有について……説明が不十分であったことは否めません」と述べて、いずれも議会に陳謝しました。
議会は特別委員会を設置し、集中審議へ
この日の委員会で、阿南委員長は「9月議会において、ケーブルテレビ事業に関する特別委員会を設置し、過去を検証し、実態を解明することによって、今後の方向性を見出す必要がある」と提案し、異議なく了承されました。10月〜11月にかけて特別委員会による集中審議が行われる予定です。
FTTH化工事で誰が利益を得たのか
工事の前後で、御前崎ケーブルテレビの収益構造は大きく変化しました。
- 通信事業収入:工事前(平成30年3月期)44百万円 → 工事後(令和6年3月期)118百万円に増加
- 放送事業収入:工事前(平成30年3月期)231百万円 → 工事後(令和6年3月期)204百万円に減少
- 営業利益:工事前(平成30年3月期)55百万円 → 工事後(令和6年3月期)251百万円に増加
御前崎ケーブルテレビは、御前崎市からの負担金収入(毎年約1.4億円)を「受託収入」として計上しており、これが利益の大幅な押し上げ要因となっています。
FTTH化工事により、御前崎ケーブルテレビは施設の所有権を取得し、高速インターネット通信が可能になったことで通信事業者としての競争力を高め、通信事業収入を大きく伸ばしました。
また、市が直接発注していれば競争入札の対象となったはずですが、御前崎ケーブルテレビが発注主体となったことで、主要株主であるシーテックが競争を経ることなく、ほぼ確実に工事を受注できる仕組みになりました。結果として、シーテックは競争入札を経ずに約15億円規模の工事を受注することになりました。
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